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知的障害を持つ人の高齢化への「過程」を支える

6月から、限界まで仕事を頑張ってきた60代女性の知的障害を持つ方(Nさん)が、私の勤務する事業所を利用されることになりました。

Nさんはずっと以前から目が見えにくい、手が痛い、疲労がとれない等の症状を抱えながら、「仕事が出来ない=自分の価値が下がる」との思いが強く頑張り続けてしまった結果、手の激痛に伴い突然ホームから出られなってしまったそうです。
手の治療を終えても葛藤から出勤できず、「こんな施設があるから見てみませんか?」とホーム職員に促されて当事業所に見学に来られ、その後4日間を体験利用されました。

利用者の方々が週1日~4日、別の事業所で仕事を継続しながら、当事業所で音楽、茶道、造形、英会話、調理、ゆらぎ体操、その他のプログラムに参加され、高いレベルの課題に取り組まれている姿を見て驚かれ、Nさんにも実際に参加して頂き、即日利用を希望されました。
Nさんは現在、当事業所を週3日利用をされながら、週2日は仕事を継続されています。ご本人の目指す生き方へお役に立つことができ、こんな嬉しい事はありません。

今後、知的障害を持つ方が高齢化していく中で、ある日仕事をばっさりと止めてしまい、環境を変えて仕事以外の活動だけを行う事業所で過ごすのではなく、このように両立のバランスを選択しながらその人に合ったライフスタイルを作る事が非常に大切です。高齢化への対応とは、その「経過」を支えるものです。

そしてその仕事以外の活動は、仕事にも勝る質の高い内容を保障することにより、仕事から離れる心理的抵抗を軽減します。むしろ様々な活動による多様なアプローチから潜在する可能性が次々に引き出されることに、ご本人が驚かれることでしょう。

また障害の有無に関わらず、年齢を重ねた人が生きていく上では、仕事だけではなく安心できる人間関係も人生を支える大きな要素です。
高齢化した人に対するサービスが施設内で充足できないことを理由に、新たな事業所でゼロから人間関係を築くことが、実は機能低下に大きく影響しているのではないかと考えています。

現在の障害者福祉には、「仕事を提供する施設」と「仕事以外のプログラムを提供する施設」から状況に合わせて併用のバランスを選択するシステムが機能しているかといえは、現実はNOです。これまでは仕事を保障することにエネルギーを注ぎ、その部分は充足できていると感じますが、仕事を卒業しつつある方への対応は今後の課題です。

「仕事」か「仕事以外の活動」のどちらかしか選べないのではなく、事情に合わせて日数を選択出来ればよいのです。
「毎日仕事をするのは厳しいけど止めたくない、週に何日か働きたい」「仕事をしない日は質の高いプログラムで自分の可能性を発揮したい」という思いを抱える全ての人に、その希望が保障されるよう、私にできる事を進めたいと思います。

by liddell97 | 2017-06-25 13:15 | 障がい者施設の仕事

横浜市にある障がい者施設の職員です。~ 日々、心が喜ぶものを ~


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